この記事で分かること
Windows で Clash Verge Rev を使っていると、「ブラウザは開けるのに一部のアプリだけ接続できない」「DNS の応答が遅い」「アクセス先によって接続先が変わり、ログの見え方も安定しない」と感じることがあります。このような場合に候補となるのが、通常の DNS ではなく、Clash のルールと組み合わせて名前解決を管理する Fake-IP DNS です。
本稿では、Windows 版 Clash Verge Rev で Fake-IP DNS を有効にする前に確認すべき条件、設定画面の探し方、DNS サーバーの入力方法、設定を反映する手順、実際に Fake-IP が使われているかを確認する方法まで、順番に説明します。単にスイッチをオンにするだけではなく、DNS モード、名前解決の対象、システムプロキシ、TUN、IPv6 がどのように関係するかも整理します。
なお、Fake-IP はすべての環境で常に最適とは限りません。社内ネットワーク、学校やホテルの Wi-Fi、オンラインゲーム、プリンターや NAS などの LAN 機器では、通常の方式や専用の除外設定が必要になることがあります。まずは現在の設定を控え、問題が出たときに元へ戻せる状態で試してください。
Fake-IP DNS の仕組みと Windows で使う理由
通常の DNS は、ドメイン名を実際の IP アドレスへ変換して返します。たとえばブラウザがサイトへ接続するとき、最初に DNS サーバーへ問い合わせ、その結果を使って接続先を決めます。Clash の Fake-IP 方式では、Clash がドメイン名に対して仮想的な IP アドレスを割り当て、後からその仮想アドレスと元のドメイン名を内部で対応付けます。
この方式の利点は、アプリケーションが最初からドメイン名を意識していなくても、Clash が元の宛先を把握しやすいことです。IP アドレスだけを見て処理するアプリでも、Clash のルールに基づいて PROXY や DIRECT へ振り分けられる場合があります。特に、多数のドメインへ接続するブラウザや、プロセスごとのプロキシ設定を持たない Windows アプリでは、TUN と組み合わせたときに効果を感じやすくなります。
一方、Fake-IP のアドレスは実在するサーバーのアドレスではありません。そのため、アプリが DNS の逆引きを前提にしていたり、ローカルネットワーク上の機器を IP で直接探したりすると正常に動かないことがあります。DNS の応答だけを変える機能ではなく、名前解決とトラフィックの経路を Clash 側で一体管理する仕組みだと理解すると、トラブルの原因を追いやすくなります。
設定前に確認する項目
設定を変更する前に、Windows と Clash Verge Rev の状態を確認します。Fake-IP の項目名や配置はバージョン、使用している Mihomo コア、表示言語によって少し異なることがあります。見つからない場合は、設定画面の検索欄で DNS、Fake-IP、enhanced-mode などを検索してください。
- Clash Verge Rev のバージョン:古いクライアントでは、現在の Mihomo コアが提供する DNS 項目を GUI から編集できないことがあります。
- 使用中のプロファイル:設定を編集しても、別のプロファイルへ切り替えると変更が見えなくなる場合があります。現在アクティブなプロファイルを確認します。
- 他の VPN や DNS アプリ:別の VPN、AdGuard 系アプリ、セキュリティソフトの DNS 保護機能が、53 番ポートや仮想アダプターを占有していないか確認します。
- 管理者権限:Fake-IP だけなら通常の設定で済むこともありますが、TUN を併用する場合は Windows の管理者許可を求められることがあります。
- 現在の DNS 設定:変更前に、Windows のネットワークアダプター、Clash の DNS、TUN の状態をメモしておくと復旧が簡単です。
会社や学校の端末では、管理ポリシーによってネットワークアダプターの追加や DNS の変更が制限されていることがあります。許可されていない端末で無理に TUN を有効化すると、接続障害だけでなく利用規約上の問題になる可能性もあるため、管理者の指示を優先してください。
Clash Verge Rev で Fake-IP DNS を設定する手順
ここからは Windows 上で実際に設定します。画面の表記が「DNS 設定」「名前解決」「DNS の強化モード」などになっている場合もありますが、探すべき中心項目は enhanced-mode です。
- Clash Verge Rev を起動する:タスクトレイの Clash アイコンを右クリックするか、スタートメニューから管理画面を開きます。
- 現在のプロファイルを確認する:「Profiles」または「プロファイル」で、実際に使用中の YAML を選びます。複数の購読を登録している場合は、編集対象を間違えないようにしてください。
- 設定画面を開く:「Settings」「設定」「Profiles」内の編集項目から DNS セクションを探します。GUI に直接編集項目がない場合は、プロファイルの YAML 編集画面を使います。
- DNS を有効にする:DNS セクションの
enable: trueに相当する項目を有効にします。DNS 全体を無効にしたままだと、Fake-IP のモードを選んでも期待どおりに動きません。 - モードを Fake-IP に変更する:
enhanced-mode: fake-ip、または画面上の「Fake-IP」を選択します。通常のredir-hostが選ばれている場合は、Fake-IP へ切り替えて保存します。 - DNS サーバーを入力する:
nameserverに利用する DNS サーバーを指定します。複数入力する場合は、遅延、安定性、利用ネットワークとの相性を考えて選びます。 - 設定を保存して反映する:「Save」「保存」「Apply」などを押し、必要に応じてプロファイルを再読み込みします。保存しただけでなく、アクティブなプロファイルへ反映されたかを確認してください。
YAML を直接編集する場合の最小構成は次のような形です。実際のプロファイルには既存のルールやプロキシグループがあるため、DNS セクション全体を置き換えるのではなく、必要な項目だけを慎重に追加してください。
dns:
enable: true
listen: 0.0.0.0:1053
enhanced-mode: fake-ip
nameserver:
- 1.1.1.1
- 8.8.8.8
fake-ip-range: 198.18.0.1/16
listen のポートが他のアプリと重複すると DNS が起動できません。また、購読プロファイルが更新されると手動で追加した項目が上書きされることもあります。設定後に購読を更新した場合は、Fake-IP の項目が残っているか再確認してください。GUI の「DNS 設定を上書きする」機能があるなら、プロファイル更新後も維持される場所へ記述するのが安全です。
DNS サーバーの選び方
DNS サーバーは、単純に有名なものを大量に登録すればよいわけではありません。応答の速さだけでなく、現在の ISP や Wi-Fi 環境から到達できるか、HTTPS や TLS の問い合わせを正しく処理できるか、ログを残す方針を受け入れられるかも確認します。公共 DNS がネットワーク側で遮断されている環境では、名前解決がタイムアウトして Web ページまで遅く見えることがあります。
最初は 2 つ程度に絞り、Clash の DNS ログや実際のブラウジングで比較してください。自宅では高速でも、職場やホテルでは応答しないことがあります。プライバシーを重視する場合は、利用する DNS サービスのポリシーを確認し、必要に応じて DoH や DoT に対応した設定を検討します。ただし暗号化 DNS を増やしすぎると、問題発生時にどの層で失敗したのか分かりにくくなります。
Fake-IP の除外設定と LAN 対策
Fake-IP を有効にしたあと、すべてのドメインを仮想アドレスへ変換すると、家庭内機器や一部の Windows サービスで問題が起きることがあります。そのため、ローカルネットワークや特定の予約ドメインは Fake-IP の除外リストへ追加します。項目名は fake-ip-filter、画面上では「Fake-IP Filter」や「Fake-IP 除外」などです。
localhost、*.local:自分の PC や LAN 内サービスの名前解決に使われます。time.*:時刻同期が不安定になる場合に確認します。*.lan:家庭用ルーターや NAS がこの形式の名前を使う環境で役立ちます。- 社内ドメインや学校内ドメイン:内部 DNS でしか解決できない名前は、組織の指示に従って除外します。
プリンター、ファイル共有、NAS、ゲーム機などが見えなくなった場合、まず Fake-IP を完全に無効にするのではなく、対象ドメインやローカルアドレスを除外できるか試します。逆に、除外を増やしすぎると対象通信が DIRECT に流れ、当初の目的であるルール分流から外れてしまいます。Clash の接続ログで、問題のドメインがどのルールに一致したかを確認しながら最小限に調整してください。
Windows で反映と動作を確認する方法
設定を保存したら、Clash Verge Rev の DNS サービスが起動しているかを確認します。画面にエラーが出ていないか、DNS の待ち受けポートが正常か、アクティブなプロファイルが想定したものかを順番に見ます。Windows のターミナルでは、次のようなコマンドで名前解決の結果を確認できます。
nslookup example.com
ipconfig /flushdns
Fake-IP が有効な場合、通常の実 IP ではなく、設定された Fake-IP の範囲に含まれるアドレスが返ることがあります。例の 198.18.0.0/16 に近いアドレスが表示されても、それだけで通信成功を意味するわけではありません。続けて Clash の接続ログを開き、対象ドメインの接続が記録されているか、ルールが PROXY または意図したグループへ一致しているかを確認します。
ブラウザだけでなく、Windows の別アプリでも試すことが重要です。まず一つの Web サイトで確認し、その後に普段使うアプリ、動画、開発ツールなどを少数ずつ確認します。すべてのアプリを一度に起動すると、DNS キャッシュや既存の Keep-Alive 接続が残り、設定変更の効果を判定しにくくなります。ブラウザと対象アプリを終了し、必要なら Windows の DNS キャッシュをクリアしてから再試行してください。
接続できないときの切り分け
DNS が起動しない場合
DNS が起動しないときは、ポートの競合、YAML のインデント、無効なサーバーアドレス、別アプリによる DNS の横取りを確認します。特に YAML は空白の位置で意味が変わるため、タブを混ぜず、既存プロファイルの構造に合わせてください。Clash Verge Rev のログに「address already in use」や設定解析エラーが出ていれば、その内容を優先して直します。
一部のアプリだけ失敗する場合
ブラウザは動くのにゲーム、Microsoft Store、開発ツール、社内アプリだけが失敗する場合、そのアプリがシステムプロキシを使っていない可能性があります。Fake-IP DNS は名前解決を支援しますが、アプリの全通信を自動的にプロキシへ送る機能ではありません。必要に応じて TUN を有効にし、Windows ファイアウォールの許可を確認します。ただし、既存の VPN や企業向けセキュリティエージェントと競合しやすいため、一つずつ切り替えてください。
遅い、または結果が不安定な場合
DNS サーバーの応答が遅い、ノード自体が混雑している、IPv6 が別経路へ出ている、古いキャッシュが残っている、といった原因が考えられます。まず DNS サーバーを一つずつ試し、Clash のログで問い合わせのタイムアウトを確認します。IPv6 を使わない環境で IPv6 だけが DIRECT になっている場合は、Windows と Clash の IPv6 方針を揃えます。設定を変更した直後だけでなく、数分間使ったときの安定性も見て判断してください。
よくある質問
Fake-IP は通常の DNS より必ず速いですか?
必ず速くなるわけではありません。Fake-IP の主な価値は、名前と通信経路を Clash のルールで管理しやすくすることです。DNS サーバーが遠い、ノードが混雑している、ネットワークが公共 DNS を制限している場合は、通常方式より遅くなることもあります。速度だけでなく、対象アプリが意図したルールへ入るかを確認してください。
Fake-IP を使うなら TUN も必須ですか?
必須ではありません。システムプロキシを利用するブラウザやアプリなら、Fake-IP とルール設定だけで十分な場合があります。プロキシ設定を無視するアプリも対象にしたいときは TUN が候補になりますが、VPN、ファイアウォール、企業管理ソフトとの競合を確認してから有効にしてください。
プリンターや NAS が見えなくなったらどうしますか?
*.local、*.lan、社内ドメインなどを Fake-IP の除外リストへ追加し、LAN 通信が DIRECT になるルールを確認します。IP アドレスで直接アクセスできる場合は、名前解決だけが問題になっている可能性があります。除外後に DNS キャッシュを消去し、機器を再検索してください。
設定を元に戻す方法はありますか?
Fake-IP を redir-host または既定の DNS モードへ戻し、追加した除外項目を確認してから保存します。TUN を有効にしていた場合は先に停止し、Windows のネットワーク接続と DNS が復旧しているか確認してください。変更前のプロファイルを保存しておけば、切り戻しはより安全です。
Windows の DNS 設定を手作業で書き換えるだけのツールは導入が簡単でも、アプリごとの除外、ルールの確認、Fake-IP と TUN の組み合わせ、接続ログの追跡まで一つの画面で扱うのが難しいことがあります。それに対して Clash Verge Rev は、DNS モードを選び、Fake-IP の除外を調整し、実際にどのルールへ流れたかをログで確認できます。設定を段階的に試して原因を説明しながら直したいなら、Windows 上でこの一連の作業をまとめて管理できる Clash の構成が現実的です。