TUNモードが必要な理由:システムプロキシの限界
macOSでClash Verge Revを使用している際、「ブラウザではプロキシが効いているのに、App Storeやターミナル、特定のゲームアプリだけがプロキシを通らない」という現象に遭遇したことはありませんか?これは、macOSの「システムプロキシ」設定が、すべてのネットワーク通信をカバーしているわけではないからです。
通常の「システムプロキシ」モードでは、HTTP/HTTPSプロトコルを使用する一般的なアプリのみが設定を読み込みます。しかし、独自プロトコルを使用するアプリや、システム設定を無視するように設計されたソフトウェア、コマンドラインツールなどは、プロキシをバイパスして直接インターネットに接続しようとします。ここで登場するのがTUNモード(TUN Mode)です。
TUNモードを有効にすると、システム内に仮想ネットワークカード(仮想ネットワークインターフェース)が作成されます。すべてのネットワークトラフィックはこの仮想カードを通過するように強制されるため、プロキシ設定をサポートしていないアプリであっても、強制的にClashのルール分流に従わせることが可能になります。本記事では、2026年最新版のClash Verge Revを使用した、macOSでのTUNモード設定手順を詳しく解説します。
設定前の準備:管理者権限と依存関係
TUNモードを有効にするには、macOSのシステムレベルで仮想ネットワークデバイスを作成する必要があるため、管理者権限が必須となります。設定を開始する前に、以下の点を確認してください。
- 管理者アカウント:Macのログインパスワード(またはTouch ID)が使用できること。
- Clash Verge Revのバージョン:最新の安定版を使用していること(2026年時点ではRev版が主流です)。
- 競合ソフトの終了:他のVPNアプリやプロキシツールが起動していると、TUNデバイスの作成に失敗する可能性があるため、あらかじめ終了させておきます。
Service Modeのインストール
TUNモードを安定して動作させるには、まず「Service Mode」をインストールする必要があります。これにより、Clashのコア(Mihomo等)がシステムサービスとして高い権限で動作できるようになります。
- Clash Verge Revを開き、左側メニューの
Settings(設定)をクリックします。 Clash CoreセクションにあるService Modeの横のManageボタンをクリックします。- ポップアップが表示されたら
Installをクリックします。この際、macOSのシステムパスワードを求められるので入力してください。 - インストールが成功すると、Service Modeのアイコンが緑色(Active)に変わります。
TUNモードの具体的な設定手順
Service Modeの準備ができたら、いよいよTUNモードを有効化します。以下の手順に従って設定を進めてください。
TUN Modeのスイッチをオンにする
最も簡単な手順は、メイン設定画面での切り替えです。
- 左側メニューの
Settingsを開きます。 App Settingsセクション内にあるTUN Modeのスイッチを探します。- スイッチを ON に切り替えます。
- 初回有効化時には、macOSから「ネットワーク拡張機能の追加」や「VPN構成の追加」の許可を求められます。必ず「許可」を選択してください。
設定ファイル(YAML)の確認
スイッチをオンにしても通信が安定しない場合は、設定ファイル内の tun セクションが正しく記述されているか確認する必要があります。通常、Clash Verge Revが自動で生成してくれますが、手動で調整する場合は以下のコードが基本となります。
tun:
enable: true
stack: mixed # gvisor または system も選択可能
auto-route: true
auto-detect-interface: true
dns-hijack:
- "any:53"
- "tcp://any:53"
stack: mixed は、互換性とパフォーマンスのバランスが良いため、macOSユーザーには推奨される設定です。また、dns-hijack(DNSハイジャック)が有効になっていることで、DNS汚染を防ぎ、全アプリのドメイン解決をClash経由にすることができます。
よくあるトラブルと解決策
TUNモードの設定中に問題が発生した場合、以下のチェックリストを確認してください。
TUNモードがオンにならない・すぐにオフになる
この場合、多くは権限不足かコアのクラッシュが原因です。
- Service Modeの再インストール:一度Service Modeをアンインストールし、Macを再起動してから再度インストールしてみてください。
- ログの確認:左側メニューの
Logsを開き、エラーメッセージを確認します。「Permission denied」や「Address already in use」といった文言がないかチェックしてください。 - 他のVPNとの競合:Cisco AnyConnect, GlobalProtect, 筑波大学VPNなどのクライアントがインストールされている場合、仮想ネットワークアダプタの競合が起きやすいです。
TUNモードにするとインターネットに繋がらなくなる
これは「DNSの設定ミス」または「ルーティングループ」が原因であることが多いです。
- DNS設定の確認:ClashのDNS設定で
fake-ipモードを使用しているか確認してください。TUNモードにはfake-ipが推奨されます。 - Stackの変更:設定の
tunセクションでstackをgvisorからsystemに(またはその逆に)変更して保存し、コアを再起動してみてください。
応用設定:特定のアプリをTUNから除外する
すべての通信をプロキシに通すと、逆に不都合が生じるアプリ(例:ローカルネットワーク内のNASアクセス、低遅延が求められる国内オンラインゲームなど)があるかもしれません。その場合は、設定ファイルの tun セクションに skip-proxy や bypass リストを追加します。
tun:
enable: true
# ...他の設定...
skip-proxy:
- 192.168.0.0/16
- 10.0.0.0/8
- "apple.com"
- "local"
このように設定することで、特定のIP範囲やドメインをTUNの処理対象から外し、Macの本来のネットワーク経路で通信させることができます。
まとめ:Clash Verge Revをフル活用するために
macOSにおけるTUNモードは、単なる「追加機能」ではなく、Clashの真の力を引き出すための「必須機能」と言っても過言ではありません。特にターミナルを多用する開発者や、プロキシ設定のない独自アプリを使用するユーザーにとって、TUNモードによる全トラフィック制御は、ネット環境のストレスを劇的に軽減してくれます。
一方で、TUNモードはOSの深い部分に干渉するため、設定ミスによるネットワーク切断のリスクも伴います。本記事で紹介した手順を一つずつ確認し、まずはService Modeの正常動作から始めてみてください。
他のプロキシツール(Shadowsocksや従来のV2Rayクライアントなど)と比較して、Clash Verge RevのTUNモードはUIが洗練されており、複雑なルーティングテーブルを手動でコマンド入力して書き換える必要がない点が非常に優れています。また、Mihomoコアの強力な分流ルールと組み合わせることで、動画配信サービスは海外ノードへ、仕事用ツールは低遅延ノードへといった自動切り替えも完璧にこなせます。Apple Silicon Macの高速な処理能力を活かし、快適で自由なネットワーク環境を手に入れましょう。