この記事で分かること

Steam のダウンロードが急に遅くなったり、PS5・PSN のオンライン対戦で入力遅延や切断が起きたりすると、回線速度だけを疑いがちです。しかし実際には、ゲーム本体の更新通信、ボイスチャット、認証、対戦サーバーへの UDP 通信が同じ経路に集中し、混雑した出口や不安定なノードを選んでいることがあります。本稿では、Mihomo コアを利用できる Clash Verge Rev などを前提に、Steam・PSN・Xbox の通信を用途別に分け、必要な通信だけを適切な経路へ送る方法を整理します。

ポイントは、すべての通信をプロキシへ流せば低遅延になるわけではないということです。近い地域のゲームサーバーへ接続する対戦通信は DIRECT のほうが速い場合があり、海外のゲームストア、更新サーバー、特定の認証ホストだけをプロキシへ送ったほうが安定することもあります。一方、家庭内のゲーム機は PC の環境変数を読まないため、PC 側のシステムプロキシだけでは PS5 や Xbox の通信を制御できません。TUN、ルーター、DNS、NAT の役割を分けて考える必要があります。

なお、Clash の設定は回線や地域、利用するゲームのサーバーによって結果が変わります。目的は「常に最速のノード」を探すことではなく、ゲーム中に経路が頻繁に変わらず、対戦通信と大容量ダウンロードが互いに帯域を奪わない構成を作ることです。

ゲーム通信で遅延が増える理由

ゲームで感じる「重さ」には、単純な ping の大きさだけでなく、ジッター、パケットロス、キューの膨張、NAT の相性など複数の要因があります。たとえば平均 ping が 35 ms でも、数秒ごとに 150 ms まで跳ね上がれば、FPS や格闘ゲームでは操作が引っかかるように感じます。逆に平均値が多少高くても、値が安定していてパケットロスがほぼ無ければ、プレイしやすい場合があります。

Steam のゲーム更新や大型タイトルのインストールは、数十 GB の TCP 通信を長時間発生させます。対戦中に同じ PC で更新を続けると、家庭用ルーターの送受信キューが埋まり、ゲームの小さなパケットが待たされる バッファブロート が起こることがあります。Clash のルールだけで帯域制御を完全に解決できるわけではありませんが、更新通信を別の経路に分け、ゲーム起動前に一時停止するだけでも変化を確認できます。

PSN や Xbox の場合は、ログイン、ストア表示、ゲーム更新、マッチング、ボイスチャット、対戦データが同じ端末から出ます。これらはすべて同じプロトコルや同じホストを使うとは限りません。HTTPS のストア通信だけが正常でも、UDP のマッチングやボイスチャットが不安定なら、ゲーム機の NAT タイプ、ルーターの UPnP、IPv6、二重 NAT を先に確認するべきです。

  • ping が高い:ゲームサーバーまでの物理距離、混雑した経路、遠いプロキシ出口が候補です。
  • ping が上下する:Wi-Fi 干渉、アップロードの飽和、ルーターのキュー、ノードの混雑を疑います。
  • 頻繁に切断される:UDP 非対応、NAT の制限、TUN や VPN の競合、MTU の不一致が関係します。
  • Steam だけ遅い:更新 CDN の経路やダウンロード地域が適切でない可能性があります。

Steam・PSN・Xbox の分流設計

最初から大量のドメインをルールへ追加するより、通信を三つの用途に分けると設計しやすくなります。第一は対戦やマッチングなど、遅延と安定性を最優先する通信です。第二は Steam、PSN、Xbox のストアや更新サーバーから取得する大容量通信です。第三はログイン、アカウント、ボイスチャットなど、ゲームによって接続先が変化する補助通信です。

国内または近隣地域のサーバーで遊ぶ場合、対戦通信を無条件に PROXY へ送ると、ノードを経由する分だけ距離が伸びます。したがって、まずはゲーム機やゲームクライアントを DIRECT で試し、Clash の接続ログ、ゲーム内のネットワーク統計、ルーターの状態を記録します。特定のサービスだけ接続不能になる、または DIRECT で明らかに経路が不安定な場合に、そのホスト群だけをプロキシグループへ移します。

反対に、海外リージョンのストアや更新サーバーへ接続する場合は、地域に合ったノードを固定したほうがダウンロード速度が安定することがあります。自動選択グループが短時間でノードを切り替えると、TCP 接続が再確立され、速度が一時的に落ちることがあります。ゲーム中は自動 URL テストの結果だけでなく、実際のダウンロード速度と接続の継続性を見てノードを選んでください。

用途 最初に試す経路 確認する項目
近い地域のオンライン対戦 DIRECT ping、ジッター、パケットロス、NAT タイプ
海外のゲーム更新・ストア 地域に合う PROXY 実測ダウンロード速度、接続の継続性
アカウント認証 対戦通信と同じ方針 ログインループ、TLS エラー、時刻ずれ
ボイスチャット まず DIRECT、必要時のみ PROXY UDP、マイクの切断、音声の途切れ
TIP:ルールを変更する前に、ゲーム内の ping、Clash の現在接続、ダウンロード速度を同じ時間帯に記録してください。数値を残しておくと、ノードを変えた効果と、単なる回線混雑を区別しやすくなります。

Clash で実際に設定する手順

ステップ 1:プロファイルとコアを確認する

Clash Verge Rev を開き、利用中のプロファイルが Mihomo に対応しているかを確認します。購読を更新した直後は、プロキシグループ名やルールプロバイダーが変わることがあるため、以前の設定をそのまま信頼しないでください。まずプロファイルをバックアップし、変更した項目をメモしておくと、設定に失敗した際にすぐ戻せます。

ゲーム用途では、プロキシグループに「ゲーム用」「更新用」など分かりやすい名前を付け、対戦中に自動選択が頻繁に切り替わらないようにします。URL テストはノードまでの応答を測るものであり、実際のゲームサーバーまでの ping を保証しません。候補を二つか三つに絞り、各候補を同じゲームと同じ時間帯で比較する方法が現実的です。

ステップ 2:ゲーム別ルールを追加する

ルールは上から順に評価されるため、ゲームやプラットフォームに関する具体的なルールを、広い MATCH ルールより上へ置きます。公式のドメイン一覧を無条件に追加するのではなく、Clash の接続ログで実際に表示されたホストを確認してください。アップデートで CDN や認証先が変わることもあるため、ルールは定期的に見直します。

Steam では、ストア、ログイン、フレンド、ゲーム更新、ゲーム本体の通信が別ホストになる場合があります。Steam 全体を PROXY にするのではなく、まずゲーム更新だけを別経路へ送れるかを調べます。ゲーム本体が別のランチャーを使用する場合は、そのランチャーの通信もログから確認してください。PSN と Xbox はゲーム機本体で細かなルールを編集しにくいため、ルーター側で制御する場合でも、まず必要な宛先とプロトコルを特定することが重要です。

ステップ 3:TUN モードを必要なときだけ有効にする

ゲーム機や一部のランチャーは、OS のシステムプロキシ設定を使いません。そのようなアプリを PC 上で扱う場合、Mihomo の TUN モードによって、プロキシ設定を無視するプロセスの通信も Clash 側へ取り込める可能性があります。Clash Verge Rev で TUN を有効にする前に、管理者権限、仮想ネットワークインターフェース、既存の VPN、セキュリティソフトのネットワーク保護が競合しないか確認してください。

TUN をオンにしたら、いきなり全通信を PROXY にせず、まず Rule モードで動作を確認します。国内の銀行、仕事用 VPN、プリンター、家庭内 NAS は DIRECT や実際のネットワーク要件に合わせた除外が必要です。TUN でゲームが起動しなくなった場合は、TUN をオフにして再現性を確認し、DNS、MTU、IPv6、ルートのどの層で問題が起きているかを切り分けます。

ステップ 4:PS5・Xbox とルーターを確認する

Clash を動かしている PC の TUN は、同じ LAN にある PS5 や Xbox の通信を自動的に代理する機能ではありません。ゲーム機の通信も対象にする場合は、Mihomo を搭載したルーター、OpenClash、または対応するゲートウェイ構成が必要です。家庭用ルーターを交換する前に、現在のルーターがメインルーターなのか、ブリッジ配下なのか、IPv4 と IPv6 のどちらを配布しているのかを確認してください。

二重 NAT は、ゲームの NAT タイプを厳しくし、マッチングやボイスチャットに影響することがあります。メインルーターと Clash ルーターの両方で DHCP を有効にすると、端末が意図しないゲートウェイを取得する場合があります。変更後は、ゲーム機のネットワーク診断で NAT タイプ、インターネット接続、マルチプレイ接続を順番に確認します。UPnP を使う場合も、知らない機器へポートが開かれていないか定期的に確認してください。

UDP、DNS、MTU の確認ポイント

オンライン対戦では UDP が使われることが多いため、TCP のウェブ閲覧だけ成功していても、ゲームが正常に動くとは限りません。利用するノードや上流サービスが UDP をサポートしているか、Clash の設定で UDP が無効になっていないかを確認します。ただし、UDP をプロキシへ送ることで必ず速くなるわけではありません。経路が遠くなったり、上流で UDP が TCP に変換されたりすると、ジッターや遅延が増える場合があります。

DNS も見落とされやすい要素です。ゲームサーバーのドメインを国内 DNS で解決しながら、実際の接続だけを遠いプロキシへ送ると、地域選択が意図と異なることがあります。Fake-IP や Redir-Host の方式は、アプリやゲーム、アンチチートとの相性が異なります。名前解決に失敗した場合は、DNS モードを一時的に変更し、Clash の DNS ログと実際の接続先を比較してください。

特定のゲームだけ接続開始に時間がかかる、ボイスチャットだけ途切れる場合は、MTU も候補になります。VPN、TUN、IPv6 トンネルを重ねると、パケットが大きいときだけ断片化や破棄が起きることがあります。設定値を大きく変更するのではなく、問題が起きるサービスだけを対象に、ルーターの診断機能と Clash のログを使って少しずつ確認してください。

遅延を測る正しい方法

ノード一覧に表示される「低遅延」という数字だけでゲーム用ノードを決めないでください。その値は特定のテスト URL までの応答であり、Steam の CDN、PSN の認証先、実際の対戦サーバーと同じではありません。ゲーム内のネットワーク統計を有効にし、同じ地域のマッチ、同じ時間帯、同じ接続方式で複数回比較することが大切です。

測定では、平均 ping、最大値、パケットロス、接続が切り替わった回数を記録します。ダウンロード中だけ悪化するなら、回線の上り下りを使い切っている可能性が高く、Clash のルール変更だけでは不十分です。Steam のダウンロードを一時停止する、ルーターの QoS や SQM を検討する、有線 LAN に切り替えるといった対策も組み合わせます。Wi-Fi の場合は 5 GHz や 6 GHz が常に最適とは限らず、壁や距離、近隣アクセスポイントの混雑も影響します。

注意:ゲームのアンチチート、利用規約、地域制限を回避する目的で不正な経路を使わないでください。Clash は通信を整理するためのツールであり、アカウント制限やゲーム内の禁止事項を無効にするものではありません。

よくある質問

Steam 全体を PROXY にすればダウンロードは速くなりますか?

必ずしも速くなるわけではありません。Steam のダウンロード速度は、選択した地域、CDN の混雑、契約回線、家庭内のほかの通信に左右されます。DIRECT と PROXY を同じ時間帯に比較し、実測速度と接続の安定性を確認してください。対戦中に更新する場合は、速度よりもゲーム通信へ影響を与えないことを優先し、更新を一時停止する方法も有効です。

PC の Clash だけで PS5 や Xbox もプロキシ経由になりますか?

通常はなりません。PC 上のシステムプロキシや TUN は、その PC の通信を対象にする機能です。PS5 や Xbox も対象にするには、対応ルーターやゲートウェイを LAN に設置し、正しい DHCP、DNS、ルーティングを構成する必要があります。変更後は NAT タイプとマルチプレイ診断を確認し、問題があれば元のゲートウェイへ戻して比較してください。

UDP 対応ノードならオンライン対戦の遅延は必ず下がりますか?

UDP を扱えることは重要な条件ですが、低遅延を保証するものではありません。ノードまでの距離、上流の混雑、ゲームサーバーまでの経路、パケットロスの有無を実測する必要があります。まず DIRECT で測定し、次に同じ条件で UDP 対応ノードを比較すると、プロキシ経由の効果を判断しやすくなります。

TUN をオンにしたらゲームが起動しなくなりました。どうすればよいですか?

既存の VPN、アンチチート、セキュリティソフト、IPv6、DNS、MTU の競合を順番に確認します。最初に TUN をオフにして問題が解消するかを調べ、解消する場合は Rule モード、DNS モード、除外設定を一つずつ見直してください。ゲームのファイルやアンチチートを無断で変更するのではなく、公式サポートと利用規約を優先してください。

ゲーム用の別クライアントや一般的な VPN は、全通信を一つの出口へまとめるため設定が簡単な反面、近い対戦サーバーまで遠回りしたり、Steam の大容量更新とリアルタイム通信を同じ経路へ流したりすることがあります。Clash は TUN、ルール分流、UDP、DNS、ルーター構成を個別に調整できるため、DIRECT と PROXY をゲームごと・用途ごとに選び、遅延とダウンロード速度を実測しながら環境を固められる点が強みです。Steam・PSN・Xbox の通信を自分の回線に合わせて整理したいなら、対応する Clash クライアントから始めるのが自然です。

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